「BODY&MOVE」について宮田瑞稀インタビュー | 11:32 |
卒業生インタビュー 鈴木生 | 17:15 |
卒業生インタビュー 鈴木生
では、まずはお決まり卒制展示を終えての感想
鈴木「作品を作ることと、そして学内展の係りをやっていたのでその準備にいっぱいいっぱいで、展示がどうだったかあまりそちらに思い入れがありません。」
山田「作品の満足度は?」
鈴木「7割方できたかなあと、残り3割はもうちょっとつめて出来たかなあと。たとえば本数を増やしたり出来たんじゃないかと思います。 1年ぐらい前からプランを練っていて、色々考えてみてもどうも既存の作品に似てしまうような感じになって、作り始めるのが遅くなって、何を作ったらいいかわからなくなって…。それでそのどうしようもない状態がそのまま作品のテーマになったような感じで、テラコッタにチェーンを巻きつける形になりました。芯の部分が自分自身でそれを取り巻く環境がチェーンで。 反省点としてはちょっとテラコッタの方がうるさすぎるかなあと思いました。表面に彫ったパターンももうちょっとシンプルにした方が良かったかもしれないと思いました。」
山田「卒業制作を作り始める前から素材をいくつか使うことにこだわっていたみたいだけど、それはうまくいった?」
鈴木「はい。これからまた色々試してみたいと思っています。今回の作品でもチェーンの巻き方で全然見方は変ってくるし。これからまたテラコッタと鉄の組み合わせを色々試してみて、それに鉄と木の組み合わせなんかもこれからやってみたいと思ってます。」
山田「卒制のアンケートで『心の…』というタイトルの鈴木君の作品に対して『この作者の心ががんじがらめにされているんですか?』とか書かれていたけどそれについてはどう思った。」
鈴木「なんか伝わったのかなあと思います。 まあ作品はいったん出来上がってしまうと作者の手から離れて後は人にどんな風に感じてもらえるかはわからないので、どんな風に感じてもらってもいいと思っています。何か思ってもらえることがあればいいなあと。」
山田「作品から何を感じ取って貰えるか、それはわからないし強制は出来ない。ただ、作るときにはしっかりと自分のビジョンとかこうしたいという思いが無いと作れないよね。では、ちょっとこれからのことを聞きますが、卒業後は鋳造(金属を溶かして流し込む方法)の工房に行くことが決まっているようだけど、そこではどんなことをするのかな?」
鈴木「1年間鋳造の作業を手伝いながら勉強するつもりです。基本的な素材の性質や作業工程を勉強しにいくつもりです。」
山田「自分の作品は作れるの?」
鈴木「そこの工房に行く前に実家で原型を作ってそれから工房に行く予定です。工房のお手伝いが始まったらまあ1年間はここでやってきたテラコッタは出来ません。テラコッタは自分にとって何か自然な感じのする素材で好きです。古くから人間が扱ってきた土。作業中の手触りも、素焼きした赤っぽい状態も好きです。」
山田「作業中のテラコッタの自然な感じからすると、これからいく鋳造での作品作りは有毒なガスが出たり大変だよね。」
鈴木「そうですね。ただ出来上がってくる時の面白さが鋳造にはあると思います。石膏で作った原型でも、型を取ってブロンズを流し込むと急に完成度が上がったように見える。」
山田「鈴木君はお父さんも鋳造で作品作りしている方だから、流し込みの作業は難しいとしても、その前後の作業工程なんかはある程度家でも見られるのかな?」
卒業生インタビュー 小山田夏海 坂本知子 | 09:13 |
卒業生インタビュー 坂本知子 小山田夏海
優秀賞を受賞したこの二人は合作による卒業制作。
オスカー・ワイルド著「サロメ」を題材とし、人形制作を坂本さんが空間演出を小山田さんがそれぞれ担当し制作したそうです。
管理人「では、卒業制作展終えての感想をお願いします。」
二人「感想っていうか反省点ばっかりです!!」
管理人「え?具体的にはどんなところ?」
小山田「私は空間演出を担当したのに人形に頼りすぎた空間制作になってしまった。作りこみが足りなくて異質な感じがうまく出せなくて、人形をより雰囲気のあるものにするはずが人形によって雰囲気を持たせて貰った感じで助けられちゃった感じで…言葉にならないです。」
坂本「私も人形の作りがまだまだ甘いことが反省点。ヤスリがけがまだ足りないんだけど、ヤスリがけしすぎると形が甘くなったりするのでその辺の加減がうまくいかなかった。それに原型を作る段階で作業工程の見通しが甘く型を取る際に不都合の生じるポーズで原型を作ってしまった。まあ結局何とかなったにはなったんですけど…」
管理人「ふむふむそんなことがあったのね。展示でのお客さんの反応はどうでしたか?」
二人「思った以上にウケがよかった。気味悪がられるかと思ったら、意外と皆気に入って貰えたみたいでビックリしました。」
坂本「あっでも今回の卒制で一番ビックリしたのは、小山田さんとホントにたくさんけんかをしたこと。」
二人でこんなことでけんかした。あんなことでけんかした。と話は卒制とはそれたところで大盛り上がり。けんかの種は作品のイメージ、質感の好みをお互いの担当を超えて注文したことなどから始まり、生活習慣への不満まで…
坂本「今では笑い話ですけど、ホントにお互いストレスがたまって。それでも私は小山田さんに家に泊まりにいたりしていたんですけど、小山田さんの歯軋りを聞いてこいつもストレスたまってるんだなあとか思ったりして…」
制作期間中のどれだけ長い時間を二人一緒に過ごしてきたかが良くわかりました。
管理人「はいはい。それじゃ話を卒制に戻しましょう。今回題材にした「サロメ」について、あんまり馴染みのある題材では無い様に感じたんだけれど、どんな経緯でこれを扱うことになったのかな。」
坂本「もともと「サロメ」を題材にしようと思ったのは私で、18歳か19歳くらいの頃初めて読んで気味悪いと思って、でもそんなに特別な思い入れがあったというわけではなくて。卒業制作何作ろうかと思って考えていて。卒業制作の前に一体1mの大きさの人形を作ったとき小山田さんに「物語性が足りない」と言われていて。それも気になっていて、なんとなく思い出したのが「サロメ」だったんです。この物語ではヨハネという登場人物が首を切られたり身体がばらばらにされる様なイメージがあって、それと制作している時の人形のパーツのイメージが合って。 よく人形の世界ではアリスとか赤ずきんとかは使われているけど「サロメ」は使われているのを見たことが無いし。それでやってみたいと思ったのが、始まりです。で、小山田さんとの合作と言うのは卒制前1mの大きさの人形を制作した時にも衣装を作ってもらっていて。私も以前から人形を作っていたんだけど、人形の衣装が作れなかったりして。そしたら小山田さんが衣装を作れて。それに人形単体と衣装だけで見せるよりさらに人形の置かれる場があったほうがいいなあと感じていて、そう思っていたときに、また小山田さんが空間も作りたいと言うことで、今回はお互いの利害がぴったり合ったような感じになり、合作でやることになりました。「サロメ」の題材を決めたのは私ですけど、物語の背景なんかは全部小山田さんが調べて、どんなものを使うか決めて、全体の雰囲気は衣装とかその空間で使うものからかなり出ています。」
小山田「人形の周りにあるものはずべてこの物語からの意味や、この物語をベースに独自に解釈して変更した部分があります。人形に着せる衣装の色や、持たせるもの、周りに散らばっているものも紙にかかれた詩なども含めてすべてに意味があります。ホントに細部までこだわって作ったけれど、なかなかそこまでは見てもらえなかった。」
管理人「学外展から学内展でも展示を変えて、その物語が展開していくように作られていて、さらに学内展では毎日人形の配置が変っていたよね。まあお客さんが来られるのはだいたい一回だし、その一日でたくさんの作品を見に来ているからね。どうしても毎日それを見てこんな風に変わってこんな意味があるのかな。っていう見方するのはちょっと難しいね。」
坂本「そうなんです。作品見た人に色々盛り込み過ぎ息苦しいっていわれました。確かにそういう部分もあると思うんですけど、やりたかったんです!でもやっぱり卒展には向かなかったかなあとも思ってます。」
管理人「そうかあ。では、私もそもそも「サロメ」の物語をヨハネが女の子の命によって首切られたとか、その程度に簡単にしか知らなくて、二人の作品の学内展で出てきた羊とヤギの角を持った男の子?女の子?の人形とかなんだろうなっと思った。綺麗だったし面白かったからそれで充分なんだけど。それにもばっちり意味があるわけだ。」
坂本「はい。ちなみに今回サロメを男の子として、羊とヤギの角の子は両性具有として作っています。サロメは特権階級の人と少年との不思議な因果を象徴するような存在として、また王様の欲望の異常さを強調するために男の子にしました。羊とヤギは天使とか悪魔みたいに人に何かをつぶやく非現実的な存在として両性具有に…まだ色々あるんですけど…。それを演出するために人形の塗装の色はそれぞれ結構変えていたり…」
管理人「あ〜私はほとんど毎日展示もみていたけど今、色々聞いてやっと全体の世界観が見えてきたかも。いや色々聞いて作品の新たな色が見えてきたって感じかなあ。へ〜。何度も足を運んで立体作品で物語を見せるっていうのはどういう展示形式をとったらいいんだろうね。映像にするのがいいのかなあ?う〜ん。」
坂本「私、もともとはディズニーランドのホーンテッドマンションが凄く好きで、それもアトラクションの中に置いてあるものから庭の造りまで、何から何まで意味をかんじささせてくれて、行く度に新しい発見がある。そんな感じに出来たらいいなあって思ってるんです。」
小山田「そうそう、ちょっとした金具とかそういうところまでこだわっていて凄くいい。」
管理人「あ〜そうかそこに原点があるんだね。なんとなくわかる感じがする。」
坂本「私と小山田さん二人とも、以前から魔術系の話とか凄く詳しくて、私たちが出会ったのは2年前ですけど、その時から共有している部分がたくさんあった。それで今回もここまで作る事が出来た。これから私はまだ人形を作っていくし、小山田さんはギャラリーを持つ、つまり空間を持つのが夢だからそこで二人の表現ができたらいいなあと思ってます。」
卒業生インタビュー 加藤海 | 09:26 |
卒業生インタビュー 加藤海
金属を使って香炉を作った加藤さん。
まずはお決まりの卒制展示を終えての感想から
加藤「4年間でいろんな事を学んできて、卒業制作は金属で作ることにしたのですけど、卒制以前にちゃんと金属で作ったのが1点だから今回の作品で2点目。わからないことばっかりだったから、やってみてこうするとこうなるんだとか金属の性質とか凄くわかるようになりました。卒業制作の作品の本体も一回失敗して始めから作り直した時、一回目よりスピードも技術も上がっているのを感じられた。他にも銀粘土とか、真鍮とかそれまで使ったことの無い金属を使って勉強になった。工作上の反省点も見えてきた。」
管理人「今回、彫刻専攻学生の作品としては珍しく工芸的な作品を作ったけど。どういうきっかけで香炉を作ろうと思ったの?」
加藤「3年生の金属の課題でろうそくを中に入れる作品を作って、使えるものを作る、身近なものを作る、ということが凄くしっくり来た。この作品を作った時に始めて人にも自分が作ったものとして見せられるものができた気がした。彫刻は見るのは好きだしいいなあと思うけど、実際自分で作ってみるとなんだかピンとこない。講評で出来ているところ、できていないところを先生に指摘されても腑に落ちない感じがして…終着点が見えない感じがありました。粘土は作業のひとつひとつが作品全体の印象に影響するから作業工程もこれでいいのか良くないのか不安になってしまっていました。金属の制作では途中までえんえんと同じ作業を繰り返してほとんど無心で出来るようなところがあって、それでも形は少しずつ変っていくのが面白い。それから金属で制作をするときは自然に使うものを発想していました。すると、それが部屋に置かれる様子を想像したり、使っている人の姿を想像できることが楽しくて、それで卒業制作も使えるものを作ろうと考えました。私は部屋でお香をたくし、そういう人は結構いると思います。身近に使えそうでいいかなあと思って香炉にしました。」
管理人「出来上がった作品を見て、仏具みたいだと言われることがあったみたいだけど、作る前に仏具は意識していた?」
加藤「全然意識していませんでした。」
管理人「仏具みたいって言われるのは嬉しい?それとも嫌?」
加藤「嫌じゃないです。実家にも仏壇があるし、それを綺麗だなあと思って見てました。仏具に限らず、教会も神社も宗教的な意味合いにかかわらず、その意匠は好きです。蓮をモチーフにしているのも仏具からの影響と言うよりは形が好きということだと思います。それに地元の公園の池に生えていたり、父が昔卒業制作で取った写真を見せてもらったときに蓮の写真があって、綺麗だなあと思ったことがありました。もしかするとそういうことも影響しているのかなあ?」
管理人「これからこの作品は自分の部屋に置いて眺めていたい?」
加藤「もともとコンセプトを女の人が部屋に置いて楽しめるものとしているので、展示しているときやっぱり女の人からの反応が良かったので凄くそれが嬉しかった。人に見せることの面白さとか大切さを知りました。この作品に関しては上の香炉の部分と下のスタンド部分のつながりが悪い気がして、もう少しなんとかしたいので、とりあえず上のところだけはずして部屋に置きたいと思っています。今度は今回の作品より小さくて完成度の高いものを作りたいです。そして人に使ってもらっても大丈夫だなと思える完成度のものを作れるようになったら人に使って貰いたいです。漠然と不特定多数の人に使ってもらいたいと言うより、友人とか知り合いのこの人に作ると言う感じでやっていければいいと思っています。一つ作ると、ここの部分が出来ていないとか、ここはこうしたいとか、いろいろ出てくるので、すぐ次を作らなきゃいけなくなってくる。がんばらなきゃと思います。」
専攻の彫刻の枠にとらわれず、自分の感覚とスタンスをしっかりと持って作り上げた卒業制作。本人が思っている以上に、近い将来すぐに加藤さんの作品が人に使われる日が来るだろうと予感し、インタビューを終えました。
卒業生インタビュー 加藤有造 | 09:51 |
卒業制作作品「突破」が最優秀賞となった加藤君
管理人「卒業制作おつかれさまでした。まずは卒業制作学外展、学内展を終えた感想を聞かせてください。」
加藤「まず率直な感想としてはやっぱり作品の評判が思った以上に良くて単純に嬉しかった。実は今回の作品は9月に新制作展に出品していた作品なんですが、その時はその展覧会の先生方や、先輩からはとても評価が低くて、酷い反応だったのでかなり自身をなくしていました。なので、卒展ももうどうでもいいやという気分で出品していました。そしたら、学外展で最優秀賞なんてもらっちゃって。それから展示期間中に専門家の方だけでなく、そして同世代の人にもたくさん見てもらう機会を得て、学外、学内の展示でそれまでの評価とか反応と全然違っていてびっくりしました。 面白いとか勢いがあってインパクトのある作品だとか感想をもらって凄く嬉しくて。」
管理人「そうだね、よかった。展示の成果だ。展示してみるとホントに予想外の反応があったり、先生からの講評とは全然ちがう印象を持ってもらえることがあるからね。では、ちょっと専門的な話になるけど、彫刻作品として今回加藤君は人体像が宙に浮いている状態を作っていますね。先生たちも良く使うけど、彫刻用語みたいなものとして量感、ボリューム、マッスとか色んな言葉があって、なんとかドシーンとした物質感、重量感みたいなものを言い表そうとしている。つまりそれは彫刻作品の評価として重視されるポイントだと思う。宙に浮かせるっていうことはそうした量感とかを表現しにくい方法だと思うんだけど、あえてドシーンと重量感のある彫刻を否定するという様な意味合いとかはあったの?」
加藤「いや、あっそうか、そうですね。そういう風にも捉えられるんだ。全然そんなこと考えていませんでした。単純に自分の状況から、こう壁をぶち破って突き進んでいかなきゃいけないって事を考えていて、それをそのまま作った感じなんです。彫刻として空間的に人物の肉付きやニッカポッカの量を動かしたり、そういうところは意識的にコントロールして作りました。」
管理人「うんうん。そうか。量のコントロールっていう部分で作品に迫力が出てきているよね。それからなんか自分の感情を素直に人物のポーズにして作るって事がうまく形になっていったという感じなのかな。
まあそれであの壁を突き破るって発想が私にはまず無いなあと思うんだけど、それってマンガとかアニメーションの影響ってやっぱりあるんじゃないかな。床から壁を突き破って人が跳んでるなんて、ポーズも状況もドラマチックというか派手というか、普通にはありえないもんね。」
加藤「あ、フィギュアっぽいとか時々言われます。でも実際に自分はマンガとかアニメとかたくさん見るほうじゃなくて、そいういうの好きってわけでもないですけどね。でもドラゴンボールとかは見てましたっていうか見てます!」
管理人「うちらは小さい頃から当たり前のようにアニメを見て育っているから、日本の現代美術の作品でよく謳われるアニメとかの影響みたいなことあえてコンセプトとしていなくても刷り込み的に影響は出てしまうこともあるかもしれないね。
そうだ、それから、格闘技。加藤君は高校で柔道やってたよね。その時の感覚とかも彫刻に含まれているのかな。」
加藤「そうですね。実際、柔道やってたときの人の動きとかはホントに眼に焼きついている。こう動くとこんな風に道着が動くとか、そういうこと知ってるからあえてそこを普通にはならないような感じの動きに強調したりしました。ポーズも袖吊り腰ごみって技にちょっと似ているかもしれません。」
管理人「えっ。何?ソデツリ??」
加藤「ソデツリコシゴミです。」
管理人「人と人がぶつかり合ってっていう肉体的な感覚を経験したことのある人の作品だよねやっぱり。」
加藤「そうかもしれませんね。」
と、それからいくつかの技を研究室で披露してくれました。
普段「根性」という言葉が彼の口から良く出てくることもうなずけるほど、「根性」で4年間自分と向き合って毎日作業を続けてきた加藤君。卒業制作はその成果が現れた力作となりました。
今回紹介できなかった作品もあったのですが、インタビューはここまで。
最後にこれからどんな作品を作りたいか尋ねると
日展開催中のお知らせ 伊藤萌木教授 | 17:16 |
10月30日(金)〜12月6日(日)
お知らせ遅くなりましたが、日展開催中です。
場所:六本木 国立新美術館
日展HP http://www.nitten.or.jp/
国立新美術館HP http://www.nact.jp/
出品
多目的工房 伊藤萌木先生
染織 上原利丸先生
陶芸 林香君先生 特選取られましたおめでとうございます。
ブログ開設記念インタビュー : 杉山惣二 教授 | 14:14 |
では ブログ開設記念といたしましてインタビューをお送りいたします。
第一回 杉山惣二 教授
管理人 山(以下:山)
「先生ブログ開設記念に先生のインタビューを載せたいのですが、いつがよろ
しいですか?」
と予定を伺ったところ、「じゃ、今やっちゃお!」 と、とたんに始まったインタビュー。
てっきり数日後あるいは来週というつもりで、来ていた私は、質問事項の準備もろくにしていないままインタビューをすることに
杉山先生:
「彫刻専攻のブログということだけれど、全体から話していくと、これから文星は彫刻とか油絵とかって言うこれまでのカテゴリーを越えて出来るようになっていかないといけないと思う。で、今の彫刻専攻は立体造形として塑造、石彫、木彫、テラコッタ、樹脂、金属、その他(新素材)
ということができる場所になっています。
それでここで、テーマにしていることは、やっぱり自然。自然を中心とした、彫刻の美の要素としての量魂、動き(ムーブメント)、構成、そして空間意識を取り入れて作品を作ることだな。
うんうん。彫刻専攻の特徴としては教室での勉強とそれからやっぱり学外にどんどん発表して、実践的教育をしていること。
文星全体としては一年で、各専攻の授業をやっていて、転専攻なんかにもフレキシブルに対応している。」
とほとんど、ここまではどんどん杉山先生が文星芸大という学校、そして彫刻専攻を紹介をしてくれるという形で、インタビューが進む。
山:
「では、杉山先生の考える理想的な学生像と杉山先生の教育の方針を教えてください。」
杉山先生:
「やっぱりMixアート。これは学長も言っているんだけど、もうなんでもやっちゃう。ここは少人数の学校だから、工房性のもの作りの現場にしていきたい。結局良いものが出来てきたところって言うのは、皆でものを作っている現場なんだと思う。俺も教授とかなんかそんなのより、工房の親方みたいなものだとおもっているし。
ルネッサンスのころなんかも、ミケランジェロは彫刻家だけど、システィーナ礼拝堂の壁画も描いちゃうわけだし、最終的には建築家そしてドームの設計なんかもやっている。で、そういった街の工房なんてところはたいていなんでもやる。学校制度が出来たのは西洋だってロダンの頃からだしね。工房では近所の人が壊れた家具を持ってきたら、それを直したり、でそういう色んな経験のなかで木の性質だとか、塗装のことだとか、材料の見方、ものの運び方まで、なんでも学んでいっちゃう。今、アルカディアでやっているのも学外での発表だから、そこで運搬、梱包、照明、画廊さんとの関わりとかいろんな事を実践できる。学生のそんな早い時期に、自分のスタイルも出来てないのに、発表するのは良くないんじゃないかと、いわれることもあるけどね。やっぱり世の中との接点を早くもって、自分でやってかなきゃいけないんだ。という意識を早く持ってもらいたい。
学生の中には、彫刻家になりたいやつだけじゃなくて、いろんなやつがいるし、実際皆が美術関係に進めるわけじゃないから、ホテルとかお店とか、就職したさきでも立体を勉強しているとモノの配置だとかなんかイベントだとか活かせることはたくさんあると思う。フィギュアとかもどんどんやったらいいと思う。それで、卒業しても何人かで工房作って、オリジナルの作品作ってマーケティングしていくってそうなってくれたらいいなあ。」
山:
「ありがとうございます。確かに立体の勉強というのは、実践的にやっていく中で社会で必要なことをたくさん学べる気がします。では、次は杉山先生自身についての質問です。唐突な感じですが先生は何者ですか?教授とか彫刻家とか肩書きは色々あるかと思います。」
杉山先生:
「ん〜なかなか彫刻家?教授?ん〜。というか水槽のなかの金魚みたいなもんで、自分ではよくわかんないんだよな。逆に質問になっちゃうけど、俺はどんなふうかな。」
山:
「金魚??ん〜なんか近所のおっちゃんって感じですかねえ。あまり今まで出会わなかったタイプの方ですが、自然に同じ空間にいられる方で、それと学生と同じ目線で、制作をしている先生?実際に同じ現場で制作をされていますし、ものづくりの先輩?という感じです。それに、先生の研究室は学生にも解放されているので、先生の様子はいつも見ていて、フットワーク軽いなあとか、それこそ実践をそのまま見させてもらっていますね。」
杉山先生:
「あらなんかいいことばっかりじゃない。うん、やっぱり工房の親方みたいになれたらいいなあ。」
山:
「では、先生の制作についていくつか教えてください。制作しているなかで、先生がいちばん面白いまたは大事だと思う部分はどういったところですか?」
杉山先生:
「作りたいもの作っているときは面白いね。今は、エロスをテーマに作品を作っている。人間の本能の欲求、食べる、○○、寝る。そのなかでも性的な部分は社会的に隠そう隠そうとする。でもそうしたタブーに対してまじめに追求しているつもり。作品はやっぱり日常的に感じたもの、気持ちが動いたものを形にしているわけだから。心が動いた時が大事だね。ただ学校の教員だしテーマがテーマだから色々気を使わなきゃいけない部分はあると思う。気をつけます!」
山:
「はい。では、次は素材について。先生はテラコッタを使って制作されていますが、いつごろ、そしてどういった経緯でテラコッタを使うようになったんですか?」
杉山先生:
「テラコッタの肌合いっていうかな。マットな感じが好きでね。ブロンズはクラシックミュージックだとすると、テラコッタはポップミュージックみたいな感じ。地球上どこにでもある素材だし。ピュアな感じがするんだよね。素材の持ってる温かみなのかな。
これをメインに使うようになったのは、30歳ぐらいから。それまでは色々木彫やったり、金属もやってたけど、時代がメカニックにシステマチックになっていくのが窮屈で、なんかねえ。それで埴輪とかそういうものにあこがれて、それからちょうどその頃イタリアに旅行に行ったんだよね。そこでエトルリアの紀元前7世紀ごろのテラコッタの作品をみたんだけど、それが本当に美しくて、いいなあっと思って。きれーなんだよ。これは凄いなあと思って。
で、テラコッタやるなら、素材がちょっともろい部分もあるからもう屋外は無理だな。と思ってたけどそれも覚悟で、テラコッタをやった。結局、テラコッタでも本焼きすれば野外もいけることがわかって、俺の作品も箱根彫刻の森美術館に置いてもらってるし。いろいろやりようはあるんだよね。」
山:
「そうなんですね。やはり素材に関しても心を動かされたところから、始まるものですね。今日はどうもありがとうございました。」
好きなこと、心が動いたこと、から突き動かされる。そんなとても根本的な部分を持ち続けることの大切さと、それを持ち続けることでしか作ることは出来ないんだということを改めてと感じさせられました。
話を伺っているとあっという間に一時間近くたち、バタバタとインタビューを切り上げました。話はあっちこっち行きながら、そしてまたいつものように先生は作業へと戻っていかれました。
杉山先生、ありがとうございました。
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